北アイルランド留学日記

2020年10月3日、コロナ禍のなかで渡航して、語学留学をした記録です。

コロナ禍での留学の体験記です。

 このブログは、コロナ禍の中、2020年10月3日から北アイルランド(英国領)で語学留学を体験した記録です。私自身、渡航前に同じ境遇の人の情報を探したのですが、ほとんど見つかりませんでした。この状況で語学留学に行く人は極めて少ないと思います。それでも語学留学に行くことは不可能ではありません。いま、語学留学を考えている人たちに、少しでも参考になればと思い、ブログを開設しました。

 留学に至る経緯については、「留学 with コロナ」というタグがあるので、そちらでまとめてみることができます。情報は随時、増やしていくつもりです。が、語学学校の宿題も大変なので、途中で更新が止まったらごめんなさい。

帰国

 ついに帰国日。朝3時半に起きたのですが、なんとなく調子がよくありません。胃が重くて食欲がありません。ひやっとする瞬間。咳は出ていないし、おそらく緊張の糸が切れて疲れが出たのだろうと思います。考えても仕方がないので、さっさと身支度をしてヒースロー空港へ向かいます。

 空港は、エアフランスは長蛇の列ができていました。(これはいつものことです、エアフランスを使う方はお気をつけて)私はKLMだったのですぐにチェックインでき、保安検査を終えて座席で待機していました。時刻通りすんなりと搭乗でき、アムステルダム空港へ飛行機で移動します。座席の埋まり具合は7-8割くらいでしょうか。家族連れが多かったので、クリスマス休暇で帰省するのかもしれません。

 そして、アムステル空港に着くと、朝8時半にもかかわらず、お店はほとんど空いていて華やかな雰囲気でした。お土産を見ている人も多く、私もお気に入りのリチュアルズで免税店限定のコフレを買いました。オランダは早々に国境をオープンし、感染者は拡大する中でもがんがんと飛行機を飛ばしています。もちろん、サニタイザーを用意したり、一部店舗はクローズしているようですが、もう8割くらいは通常営業に戻っています。利用客も多いです。

 本当にCOVID19については、国境が閉じた影響もあり、国ごとの対策が全く違います。今回の旅は、日本の成田空港の閑散とした「あ、やばい、ここはやばい」という雰囲気から始まり、英国のヒースロー空港の活気を味わい、さらにベルファスト ・シティ空港のほぼ閉鎖状態を目にし、最後には「経済活性化!」以外の言葉が出ないアムステルダム空港に来ました。これから関西国際空港に帰りますが、こちらもまた厳しい雰囲気だろうと思います。

 ヨーロッパは、ワクチン開発成功のニュースからもうCOVID19は終焉する雰囲気になっています。語学留学もこれからどんどん増えていくだろうと思います。その前の、まあまあ大変な時期に私はヨーロッパに渡り、がっつりと北アイルランドに滞在したことになります。今後、あまりない(と信じたい)ような状況を味わいました。

 もちろん、旅行できなかったり、外食できなかったり、なにより対面授業がほとんど行けなかったりで、悔しかったり悲しかったりする気持ちもありますが、帰国直前になると「来てよかったな」という気持ちが最後に残りました。ニュースを追いかけて北アイルランド議会の大揉めに揉める議会の動きを目にしたり、こういう状況での学校や大学の対応、それについての学生の反応などを(自分も巻き込まれながら)直面するのは貴重な経験でした。「北アイルランドにいる人たちは、どうやって意思決定をし、行動に移すのか」ということを、間近でみるチャンスだったからです。

 私にとっては、日本にいるよりは気楽な環境でもありました。学生の立場なので、責任のない立場だったというのも大きいのも確かです。でも、それ以上に、「法に許された範囲内ならば、自由に行動する権利がある」という大前提が、社会的に共有されていたのが大きいです。つまり、ロックダウンになったら遊びに行けず、終わればすぐに飲みに行き、さわぎ、旅行にいくのです。法で制御されない限りは、好きにすれば良いのです。日本にいると、周囲の反応を伺いながら、「迷惑をかけないように」というのを一番に考えざるをえません。法の制御以上に、世間体の制御で行動が決まります。いまも、日本はやはりこういう文化が強いのだあなあとしみじみ思いました。そして同時に、こうした自己規制こそが、日本の感染拡大を止めているのであり、政策はその動きを追認しているようにも見えます。

 英国のようないかにも近代的な市民社会と、日本のような前近代的な共同体の色合いを残した社会の、どちらがCOVID19をコントロールできるかといえば、後者だというのは感染者数の数値が示していると思います。他方、英国では早々にワクチンの認可がおり、さっそく接種が始まっています。副反応の問題などがこれから出るだろうと思いますが、この勢いは止まらないことでしょう。こうした文化や社会の違い、政策の違いに対する評価は、今後10年以上かけて検証されていくことだろうと思います。たとえワクチンによって、日常生活が戻っても、経済的な問題は深く残るだろうからです。そのなかで味わった2ヶ月半の経験は、貴重なものになると、私は思っています。

 そういうわけで、感慨深く英国を出発したのですが、アムステルダム空港内にあるラウンジで深く考えず食べたパンに衝撃を受けました。

「お、美味しい、なんだこれ????」

 そう、ここは大陸。パンの美味しい国なのです。私はいつも英国の食事を最大限に評価するように心がけているのですが、いつもオランダに移動すると打ち砕かれます(なぜ、オランダかというと、KLMを使うことが多いからです)。英国でも美味しく楽しく暮らしてたつもりですが、やっぱり、大陸のほうが食事に関しては充実してますね。そんなオチもついたところで、私は帰国便に乗るためにトランジットの向かいます。乗り遅れないようにしなければ……

 なお、このブログは留学記なので、留学が終われば更新は終わります。ただ、書けなかったエピソードなどもありますので、帰国後も書き足すかもしれません。興味がある方は、あとしばらくお付き合いください。(そして帰国後の検査が陰性であることを祈ってください)

ロンドンへ移動

 ついにベルファストの宿泊施設からの退去日。私が2ヶ月間過ごしていた部屋です。Elms BT2という、市街地のど真ん中にある、15階だてのビルの一室です。

 なんと最上階の15階の部屋に入れたので、したからの暖気があがってくるのか、全く寒くありませんでした。12月なかばまでいたのに、暖房をつけたのはなんと1回だけ。11月の初めは暑くて、寝る前に氷を食べていたくらいです。

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 ここはStudioタイプと呼ばれるワンルームタイプのお部屋でした。切望していた台所がついています。通常の新入生が入るBT9(Elms village)よりは、だいぶん独立性の高い部屋です。

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 ロックダウン中だったのもあり、私はほとんどこの部屋にこもって暮らしていました。食事も三食、ほぼ自炊でした。Wifiは大学の回線が十分に使えますし、テレビもあります。隣室から多少の物音はしますが、人の声などはなく、静かに生活できました。

 窓から見えるこの景色。晴れたり、雨が降ったり、霧がかかったり。毎日、眺めていました。

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 目の前に見えるEUROPAと書いてあるホテルは、長距離バスのターミナルとつながったホテルです。コロナのことがなければ、ここからどんどんアイルランド内の旅行にいけました。残念ながら、私は2回しか行けなかったです。本当に残念。でも、またきっとアイルランドには来ることでしょう。

 部屋を片付けて掃除をして、チェックアウト。空港に向かいます。ベルファスト ・シティ空港はカフェもお店もすべてクローズドで閑散としていました。それでもロンドン行きのブリティッシュ・エアウェイズは6-7割くらいは乗客がいました。機内では、ワゴンサービスはなかったですが、ペットボトルの水とポテトチップスが配られました。ちょっとしたことですが、うれしかったです。サービスに飢えてるんですね。

 それで、ロンドン・ヒースロー空港についたんですが、初めてターミナル5に飛ばされてしまいました。ターミナル2の近くのホテルへの行き方がわからず、空港でうろたえていると、インフォメーションの係りの人が丁寧に教えてくれました。鉄道で移動する元気はなかったので、タクシーを呼んでもらうと、なんとジャガーがお迎えに来ました。生まれて初めてジャガーに乗りました。タクシー代のもとはとれたと思います。

 無事にホテルに到着。明日は3時半に起きて、空港に向かいます。寝坊しないようにしなくては。

ベルファストの最後の夜

 退去日が明日に迫ってきたので、部屋を片付けて、あとはぼんやりしていました。最後くらい散歩にでも出ようかと思っていましたが、天気も悪いし、何より帰国が迫って気が抜けてしまったようで、疲れが出始めました。

 それでも、夕方は予約していたレストランにディナーにいきました。やっと待ち兼ねたロックダウン解除ですから!

 すっかり夜景ですが、これで16時半くらいです。

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 遠くに見える橋。もうここもすっかりおなじみの風景に。

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 予約していた、テッドフォードレストランというお店です。

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 スパークリングワインをひとりで乾杯して飲みました。ヨーロッパはカップル文化が強いと言われていますが、北アイルランドでは一度もそれを感じませんでした。女性一人客でも、問題なく歓迎してもらえますし、特に浮く感じもありません。

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 前菜はヤギのチーズのコロッケとビーツのサラダ。写真ではわかりにくいですが、ヤギチーズのムースもかかっています。

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 メインはクリスマス仕様のローストターキー、ウサギのゼリーよせ、マッシュポテト、野菜の付け合わせなどを食べました。英国のご飯は世界的にもまずくて有名ですが、良いレストランでトラディショナルなメニューを食べると美味しいです。フルボディの赤ワインをだいぶん飲んでいい気分でした。

 しかし、英国のアジアンフードブームはすごいですね。こんなトラディショナルなメニューでも、なぜか赤キャベツのソテーはお好み焼きソースの味がして、上には海苔がかかってました。不思議な組み合わせだけど美味しかったです。

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 最後はデザートまで食べて、満腹。美味しかったです。いい思い出ができました。

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試験終了

 全ての試験がやっと修了しました。結果は15日にメールで届くそうです。私の場合は、今回のコースのみの受講なので、特に点数を気にしなくていいと言うものの、解放感はあります。テスト明けの伸び伸びした気分は学生ならではですね。

 昨日はスピーキングテストで、リサーチ内容についてのプレゼンテーションを試験としてやりました。私は仕事でこういうことは慣れているのですが、やっぱり「試験!」というプレッシャーはあったらしく、やや緊張気味でした。

 録画してあとで自分でチェックしたのですが、報告後の短い質疑応答はやはりぐちゃぐちゃした感じであまり上手いとは言えませんでした。その場で、アカデミックな内容をまとめて、簡潔に説明するのはまだまだ下手くそです。それでも、楽しく動画を編集してSNSにあげたりして楽しみました。自分で見返しても、いきいきと喋っているので安心しました。

 これからの私の課題は、とにかく自分に自信を持って、心地よく喋るモードを作っていくことですね。他人に見せるための話術を練習していきたいと思います。というのも、私の仕事上、パーソナルな日常会話はたいして重要ではなく、人前で堂々と説得的に話すスキルが必要だからです。自分の話している様子を動画を見るのは勇気がいったのですが、客観的に見て「悪くないんじゃないの」と思えたのが一番の収穫でした。

 そのあと、昨日は友人と別れを惜しみました。前の寮のチャイニーズの年下の友人とは、再会を誓いました。でも彼女は私のことを20歳前後だと思ってるんですよね。もうそのままでいいか、と思っています。

 明日はベルファストでの最終日。ついにロックダウンも解除です。後ろ髪を惹かれる思いですが、最後の夜はちょっといいレストランに予約も取りましたし、楽しみたいです。

最後の週(試験期間)

 最後の一週間が始まりました。今週は学期末のテストが続きます。本当は金曜日からテスト開始だったのですが、オンラインのシステムのエラーでうまく受験できず、本部からの再受験の連絡を待っています。

 オンラインのシステムは、カメラで受験者を監視しつつ、ほかのウィンドウは開かせないという仕様になっているようですが、機能が高度すぎてちょっとした機器の違いやOSの違いで、うまく作動しなくなるようです。また、別のクラスは全員が受験できない状況でした。不満続出。教員は慌てて対応していましたが、本部の一斉試験なのでなかなか解決しないようです。

 今日は無事に試験を受けられました。出来はあんまりよくなかったですね。私は試験というものに弱く、英語教員にはいつも「え、こんなにスコアが低い?なぜ?」と聞かれます。私は試験の攻略法をうまく使えた試しがないからでしょうね。IELTSは比較的、実力と誤差が出ないと感じるので、主に不器用なのが原因でしょう。でも、私はここでの試験の成績は何にも関係しないので、あまり心配はしていません。

 先週あたりから、課題も終えてしまったので、日本や海外での仕事を片付けていっています。気持ちも、学生から本職へスイッチしつつあります。年末から年明けにかけて、やるべきことはたくさんあって、また締め切りに追われる日々に戻るなあと思っています。久しぶりの学生生活はリフレッシュになりました。

 そして、「Master Chef: Professional」という、料理人が腕を競うというBBCの番組を英語字幕をつけてみるのが楽しみなのですが、こちらに来る前からよく見ていたインスタグラムのアイリッシュの料理人の動画を見ると、驚くことにほぼ全て聞き取れました。来る前は6-7割のリスニング だったので、はっきりと差があります。変なコーパスを強化してしまいました。

 ただ、それを考えると、自分の仕事の分野の英語の動画を英語字幕を観ていれば、かなり役に立つという実感も得られました。帰ったらネットフィリックスを契約しようかと思っています。もちろん、ぼんやりと料理番組を見るから楽しいのであって、シリアスな動画を毎日みるとなると、負担にはなるので続くのか不安、というのはありますが……

ナルニア国物語の仲間たち(CS Lewis Square)とヴィクトリアパーク

 帰国まであと一週間。まだロックダウン中ですが、珍しく朝から晴れていたので散歩に出かけました。ベルファストにはC.S. ルイスのファンタジー小説ナルニア国物語」に関する彫像が街の中に設置されているらしいとの情報は聞いていたのですが、それがどこなのかずっとわかりませんでした。ついに、Googleマップで発見。CS Lewis Squereというそうです。ベルファスト の中心街から車道沿いに歩いていけば見つかりました。

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 アスラン像。私のイメージよりは細身です。

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 虚空を見つめる感じがアスランらしさがあって良いと思います。アスランは物語の中に出てくる創造主のライオンです。アスランは、突然現れては消え、唐突に何かを話しては去っていき、全てを知っているがなにも教えてくれない、そういう神様です。

 こちらはタムナスさん。

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 上半身は人間で、下半身は馬です。異世界ナルニア」には、しゃべる動物たちや精霊たちと人間が共に暮らしています。そこに、魔法の力で、第二次世界大戦下で地方に疎開してきたロンドンの子どもたちが迷い込みます。そこで始まる冒険の物語がナルニア国物語です。

 私は幼い頃から岩波少年文庫で「ナルニア国物語」のシリーズを愛読して、心の支えにしていました。幼少期の私は、友だちがひとりもおらず(本当に)、ほとんど誰とも喋らず心の中の世界を生きていました。その世界は、間違いなくナルニアにつながっていました。たぶん、当時は感受性が強すぎて現実に適応できなかったんだと思いますが、その頃の、脆弱な自分を守り、外に出ていくように心を育ててくれたのが児童文学の世界でした。

 そういうこともあって、私はベルファストを語学留学先に選んだのもあります。今の語学学校を見つけたのは偶然で、自分の探していた語学プログラムとコースがぴったり合致したので候補にしたのですが、一番心の深いところで「この街に留学しよう」と決めるときには、ベルファストがCSルイスの故郷だったことは関係したと思います。

 実際に、ベルファストにきてみると、もうルイスのいた頃の面影はなく、神話世界の記憶をたどるのは、やはりバスで数時間かけていくような北アイルランドの小さな街でした。ロックダウンの影響もあって、今回はニューキャッスルとエニスキレンしかいけませんでしたが、私はアイルランドにご縁があるようなので、また個人の旅行で来訪することになるんじゃないかと思います。不思議と「引っ張られる」ものがあるんでしょう。

 幸い、ビジターセンターが開いていたので、記念にアスランのイラストの入ったTシャツを買いました。それからミンスパイ。

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 ここのビジターセンターは、サンドイッチやパイ、ケーキが豊富で、お茶もおいしかったです。広場では休憩できるのでおすすめです。

 そのあと、歩いてヴィクトリアパークへ。スポーツについては、アスリート以外はプレイ禁止なので、サッカー場も閑散としていました。

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 鳥の鳴き声や、リスが走り回るのを眺めながら散歩をしました。最後の週末です。