北アイルランド留学日記

2020年10月3日、コロナ禍のなかで渡航して、語学留学をした記録です。

ハイブリッド(オンライン&対面)の授業

 2週目に入って、授業もようやく軌道に乗り始めました。といっても、まだ14日間の自己隔離中の学生もいて、オンラインシステムで動画で中継しながらの授業です。自己隔離が終わった学生から少しずつ合流しているので、来週にはみんな、教室に揃う予定です。

 最初の1週間はチャイニーズ女子3人と私だけで、休み時間はひたすら中国語が飛び交っていたのですが、今週からサウジアラビア男子が入ってきたので、ずいぶん気が楽になりました。彼は25歳で年もそれなりだし、がんがん発言するし、声がデカくて反応が大きいので、コミュニケーションを取りやすいです*1

 しかし、オンラインシステムを併用しながらの授業は、とても大変です。突然のマシンのトラブルも多いですし、オンライン授業の学生に指示を出しながら、オフラインとの一体感のある授業……というのは、ほぼ無理です。机を叩いてキレてる先生もいました。昨日の面談でも、担任の先生が「次週からはずっとやりやすくなるはず」とのコメント。もちろん、ベストな環境ではないですが、ベターだと思ってしばらくみんなで耐える時間が続きます。

 テキストはナショナルジオグラフィックの提供しているもので、私はとても気に入りました。最新情報が満載だし、気の利いた内容だし、そこそこ政治的でそこそこ文化的で穏当です。今日は、アルプスで発見されたアイスマンの話題でした。日本語記事は以下で一部が読めます。

natgeo.nikkeibp.co.jp

 そして、みんなでディスカッションすることになったのですが、意外な設問が。

「このアイスマンの遺体を研究に使うことに問題はありますか?」

 そう、私は少し気になっていたのです。今の学術研究の流れでは研究倫理が厳しく問われるので、遺体の解剖等には厳格な同意書が必要になります。また、日本では150年近くまでに研究者がアイヌ民族の遺骨を盗んだ問題があり、今も返還についてシビアな状況があります。私はそのことをフロアで話しました。他方、もちろん、5300年前のアイスマンに同意をとることは不可能ですし、親族を見つけることも難しいでしょう。数人の学生は「科学の発展のためなら問題ない」と答え、「進化を解き明かすことができる」という研究の利点も提起されました。そのなかで、別の中国男子は「遺体に対する敬意が必要だから、研究はしてならない」と言います。というような意見が、ずらずらっと出て面白かったです。

 さらに先生からは「あなたのおじいさん、さらにそのおじいさん、つまり先祖の遺体が発見されたら、研究しますか?」「なぜ死んだのか知りたいですか?」と問いかけてきます。その話から、今度はエジプトのミイラから、古代の王族の家族関係が科学技術によって明らかになった話へ。日本語ではこちらの記事で読めます。

natgeo.nikkeibp.co.jp

 こんな調子で、最新の研究情報を盛り込みながら、楽しい話が続きます。これはいいテキストではないでしょうか。全員が対面授業に来れたら、もっとスムーズに進行するでしょうし、ディスカッションも人数が増えればもっといろんな意見が出るかもしれません。という楽観的な見通しで、参加しています。

 

*1:私も典型的なアジア系なので、自信がないと声が小さくなり、知り合いと固まってしまいがちなので、無表情に押し黙るチャイニーズ女子を責めるつもりはないです。みんな若いし、仕方ないのです。